バーミンガム市響との日本ツアーを前に贈賞式に登場!
6月25日、2024年度のサントリー音楽賞および佐治敬三賞の贈賞式がサントリーホール ブルーローズで行われた。式には第56回サントリー音楽賞を受賞した指揮者の山田和樹と、第24回佐治敬三賞受賞公演の出演者である山本昌史(コントラバス)および田中悠美子(三味線)、そして同賞を主催する公益財団法人サントリー芸術財団の代表理事を務める堤剛らが登壇。

各賞の概要は以下のとおりで、24年度の受賞者/公演は今年の3月24日に発表されていた。
〇サントリー音楽賞:わが国の洋楽文化の発展にもっとも功績のあった個人又は団体を顕彰、 贈呈する。(賞金700万円)
〇佐治敬三賞:わが国で実施された音楽を主体とする公演の中から、 チャレンジ精神に満ちた企画でかつ公演成果の水準の高いすぐれた公演に贈られる。(賞金200万円)
贈賞式の冒頭、主催者を代表して挨拶を行った堤は、山田の国際的な活躍ぶりについて「これまで積み重ねてこられた自律的な努力や経験の証ではないでしょうか。これからも熱い信念で音楽界をますますリードしていってくださることを期待しています」とコメント。そして、その後の贈賞セレモニーでは、各人の業績を称えながら賞状および目録を受賞者に手渡した。

音楽監督を務めるバーミンガム市交響楽団との日本ツアーの開幕が週明けに控える中、贈賞式に出席した山田。先日のベルリン・フィルデビュー、そして2026/27年シーズンからのベルリン・ドイツ響首席指揮者兼芸術監督への就任など、世界の檜舞台で着実に地歩を固めているが、スピーチでは着飾ることのない朗らかさと音楽に対する真摯な姿勢を兼ね備えた、マエストロらしい言葉を残した。

山田「サントリー音楽賞という偉大な賞……正直なところ、いつかはいただけるかもしれないとは思っていたのですが(笑)、こんなに早くとは予想していませんでした。サントリーホールは僕にとって夢と希望が詰まった場所。その舞台で賞をいただけることを、本当に嬉しく思っています。
先日、ベルリン・フィルハーモニーでデビューさせていただいた後、バーミンガムに赴き今回の日本ツアーに先立つ演奏会を行ったのですが、その際にもう一つ、音楽大学のオーケストラを指揮する機会がありました。日本の学生オケとは具合が違い、はっきり言ってしまうと準備不足なところも多かったのです。でも、もちろん本番はちゃんとやらなきゃいけない。『僕は彼らに何を見せなきゃいけないのだろう』と考えていましたが、学生たちの素直で生き生きとした演奏に触れる中で、『音楽とは命をかけるのに値するものである』ということを自らの姿で示さなければならないのだ、ということを本番中に確信したのです。結果的にコンサートもうまくいき、音楽のもつ価値を再認識する機会になりました。
指揮者というのは自分では全く音を出さないのに、偉そうに指揮台に立っているわけですが……(笑)、この賞は僕がいただいたものではなくて、共に音楽を作り上げたオーケストラや合唱団の皆さまと受賞させてもらったと思っています」

続いて、佐治敬三賞を受賞した公演の出演者二人のスピーチへ。コントラバス・ソロ公演「The Unplugged Theatre」で、現代作品による2つのプログラム(森田泰之進・木下正道らへの委嘱作品初演を含む)を3日間にわたり披露した山本。

山本「メインで演奏したフィリップ・ボアヴァンの『ZAB』は、最初は楽譜も見つからない、そして何とか手に入ったかと思えば演奏の方法が分からず、結局南フランスの作曲者のもとを訪ねて教えてもらったのですが、そうした準備一つひとつが本当に幸福な時間でした。“縁の下の力持ち”と言われるコントラバスですが、私自身はこの楽器こそがソロに一番適した楽器だと信じています。これからもコントラバスにしかできない音楽を追求していきますので、今後の活動にご注目いただければ」
40年を超える活動の集大成にあたるリサイタル「義太夫三味線の音響世界」で、盟友・内橋和久(ギター/ダクソフォン)と行った25分にわたる高密度な即興演奏が評価された田中。

田中「義太夫三味線は古典芸能の伴奏で渋い存在感を放つ楽器ですが、その音響に着目した異色のコンサートに光を当てていただだき、誠にありがとうございました。地球規模の大転換が起きるなど先行きが不透明な世の中ですが、これからも身体が許す限り活動を続けて、貴重な日本の文化財が未来に生かされるお手伝いが少しでもできれば幸いです」
1969年の制定以降、故・小澤征爾(第34回)をはじめとする多くの名指揮者が受賞したサントリー音楽賞。その歴史に名を連ねた山田の今後の活動に一層の注目が集まる。
文・写真:編集部
サントリー音楽賞
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佐治敬三賞
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