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In memoriam アルフレート・ブレンデル(ピアノ)

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Alfred Brendel 1931-2025

 現代を代表する名ピアニスト、アルフレート・ブレンデルが6月17日、ロンドンで亡くなった。享年94。

 1931年、モラヴィア(現在のチェコ)に生まれ、ユーゴスラビア(現在のクロアチア)やオーストリアで育ち、グラーツ音楽院で作曲やピアノを学ぶ。偉大なピアニスト、エトヴィン・フィッシャーのマスタークラスも受け大きな影響を受けるが、その後はほぼ独学で研鑽を重ねた。1948年、17歳でグラーツで初リサイタルを開き、翌49年のブゾーニ国際コンクールでの第4位入賞を機に本格的に演奏活動を開始する。1971年にはロンドンへ移住。73年にはアメリカ・デビューを果たし、ウィーン・フィルとの共演をはじめ世界各地で演奏を重ねた。

(c)Benjamin Ealovega

 60年にわたるキャリアのなかで、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトなど、独墺音楽をレパートリーの中心に据え、最も高い評価を得た。近代作品ではリスト、ブゾーニ、シェーンベルクなども取り上げる一方、ショパンやラフマニノフのようなロマン派の定番からは距離を置いた。また、ピリオド楽器による演奏の動向にも明確な立場を示し、モダン・ピアノでの表現力を信じて疑わなかった。常に作曲家に忠実であろうとし、華やかな技巧よりも作品のもつ構築性・論理性をより重視する態度を貫いた。2008年12月の最後のコンサートは、ウィーン楽友協会で行われたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演だった。

 録音では、PHILIPSレーベルを中心に、膨大なディスコグラフィを築いた。史上初めてベートーヴェンの全ピアノ作品を録音したことでも知られる。また、ピアノ・ソナタ全32曲は3度にわたりレコーディングするなど、生涯にわたり深い探求を続けた。また、モーツァルトのピアノ協奏曲、最も脂の乗った時代に残したシューベルトのソナタや即興曲、さすらい人幻想曲なども印象深い。これらのレパートリーにおいては、作品への深い洞察力に裏打ちされた構成感、豊かなカンタービレと抒情性で比類なき存在だった。

(c)Barbara Klemm

 1971年の初来日以降、日本でもたびたび演奏を行い、知性と詩情を併せ持つ彼の音楽は、多くの聴衆の記憶に刻まれている。日本では、2009年に高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した。演奏活動引退後は、マスタークラスや講演などを通じて、世界の音楽家に影響力を保ち続け、その精神は、ポール・ルイスやイモージェン・クーパー、ティル・フェルナー、キット・アームストロングといったピアニストたちに受け継がれている。

文:編集部

放送予定

6/22(日)23:20~ NHK BSプレミアム4K「プレミアムシアター」
6/22(日)24:05~ NHK BS「プレミアムシアター」

ドキュメンタリー「ピアノの錬金術」
出演/フランチェスコ・ピエモンテージ、マリア・ジョアン・ピレシュ、スティーヴン・コワセヴィチ、ジャン・ロドルフ・カールス、ユリアンナ・アヴデーエワ、ズラータ・チョチエヴァ、エルモネラ・ヤホ、アントニオ・パッパーノ、アルフレッド・ブレンデル

ピアニストのフランチェスコ・ピエモンテージが、ピアノ音楽の不思議を、錚々たるピアノの名手にインタビューしていくドキュメンタリーで、番組の終盤にブレンデル氏が登場します。

ピアノの錬金術 –ブレンデルとピエモンテージ– (c)PARS Media 2024

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